イスラムの歴史 (2020-08-08)

(2020-8-8)　偽王スメルディス　part 3

（前回からの続き）

　オタネスは言った。「無謀に決行を急がず、もっと慎重に考えてほしい。もっと同志を増やさなければならないからだ。」　これに対してダレイオスは言った。「もしもそのようなことをすれば、あなたたちは無残な最期を遂げなければならないと考えた方が良い。もし遅らせれば、必ずやマゴスに密告する者が出てくる。もしも遅らせるというのであれば、私が他の者に先んじて密告するものと承知してほしい。」

　オタネスは言った。「それでは聞くが、一体どのようにして王宮に侵入して彼らを討つのか。各所に警備のものが配置されていることを知らないわけではあるまい。」

　ダレイオスは言った。「我らほどの身分であれば、彼らも我らに遠慮して、通さぬ者はあるまい。さらに私は、ペルシアから来たばかりで、父（総督）からの伝言を王に伝えるという口実がある。通してくれる門衛は、将来優遇しよう。逆らう者は、敵とみなせばよい。そうして奥に入り、仕事にかかろうではないか。」

　そうこうしている間に、別の事件が起こった。それは、マゴスのスメルディスたちが謀り、プレクサスペスを味方に引き入れようとしてのことだった。プレクサスペスは、本物のスメルディスを殺した、カンビュセスの家臣である。カンビュセスの死後、彼は一貫してスメルディスの生存を公言し続けていた。そこでマゴスたちは彼に、城壁前に集まったペルシアの民を前にして、ここにいるスメルディスこそ本物であると演説してほしいと依頼したのである。そうしてプレクサスペスは城楼に上り、演説を開始した。

　彼はアケメネスから始めてキュロスにいたる系譜を述べ、キュロスの代に至ると、キュロスの数々の善行を語った。そうして語り終えると、自分がカンビュセスの命令でキュロスの子スメルディスを殺したこと、今、王位にある者はマゴスであることを暴露した。そうして民に対して、もし今後、王権を回復してマゴスらに誅罰を加えることをしないならば禍いあれ、と数々の呪いをかけたあと、城楼の上から身を投じて最期を遂げた。

　そんな事件が起きているとは知らないオタネスの一行は、城へ向かう道中、プレクサスペスの事件を知った。そこで一行は協議した。オタネス一派は強硬に延期を主張したが、ダレイオス一派は決行を主張した。彼らが言い争っていると、遠くで７羽の鷹が現れて２羽のハゲタカの羽毛をむしり、肉を引き裂くのが見えた。これは吉兆であるということで彼らの士気は上がり、６人はダレイオスの意見に従って、マゴス殺害を決行することとしたのである。

（次回に続く）

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