イスラムの歴史 (2014-12-6)

(2014-12-6)　イエフの謀反　part 2

（前回からの続き）

　そこでは、軍の長たちが集まって会議をしていた。若者が入ると、全員が彼の方に振り向いた。若者は「イエフ様はどこにおられますか」と兵に尋ねてイエフを特定すると、イエフに向かって「将軍、あなたに申し上げたいことがあります。」と言った。イエフは尋ねて言った。「我々のうちの誰に対して、か。」　若者は「将軍、あなたに対してです。」と答えた。「何を話したいのだ。」とイエフが聞くと、若者は「二人きりでお話ししたいことがあります。」と言った。

　ぶしつけに会議に入ってきた素性の知れぬ若者が、将軍イエフと差しで話したいと言っている。リスクはあったが、見たところその若者は丸腰のようだし、イエフも戦闘に自信はあった。下手な真似をするようなら、殺せばいい。イエフは若者の申し出を受け入れることにし、別の天幕へ連れて行った。当然、腰には剣を帯びている。

　イエフは若者に振り向くと、言った。「話とは、何だ。」　若者は言った。「油を注がせてください。」　イエフは戸惑った。油を注ぐという行為の意味を、イスラエルの人間で知らぬ者はいない。「いったい、どういうことだ。」　イエフが聞くと、若者は言った。「私は、エリシャ様の命令によりここに来ているだけです。」　イエフは呆然とした。預言者エリシャ。預言者エリヤの後継者である。そのエリシャが、私に油を注ぐという。

　イエフは地面に膝をついた。若者は油の入った壺を取り出すと、油をイエフの頭にふりかけて言った。「イスラエルの神、主はこう言われる。『私はあなたに油を注ぎ、あなたを主の民イスラエルの王とする。あなたはあなたの主君アハブの家を撃たねばならない。こうして私はイゼベルの手にかかった私のしもべたち、預言者たちの血、すべての主のしもべたちの血の復讐をする。』」

　若者は続けた。「『アハブの家は全滅する。私は、イスラエルにおいて縛られている者も解き放たれている者も、アハブの家に属する男子をすべて絶ち滅ぼし、アハブの家をネバトの子ヤロブアムの家のようにし、アヒヤの子バシャの家のようにする。犬がイズレエルの所有地でイゼベルを食い、彼女を葬る者はいない。』」　しばし、イエフは動かなかった。若者の言葉をかみ砕くのに時間を要したのである。その隙に、若者はエリシャから命ぜられたとおり、戸を開けると一目散に逃げ去った。

（イゼベルについては、ナボトのぶどう畑の一件の際に、悲惨な最期を迎えることが予言されている。(2012- 9- 2)　ナボトのぶどう畑　part 2参照）

（次回に続く）

参考地図1-7-19：イエフの謀反

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