イスラムの歴史 (2013-9-7)

(2013-9-7)　エリヤ、天に昇る　part 2

（前回からの続き）

　エリヤは着ていた外とうを脱ぐと丸め、その外とうでヨルダン川の水を打った。すると、ヨルダン川の水が左右に分かれ、道ができあがった。エリヤは軽く振り返って自分の弟子を見た。言って留まるような男ではあるまい。あきらめと同情とほほえみが混じった複雑な表情を一瞬浮かべると、エリヤは水が引いた川底を渡り始めた。もちろん、エリシャもエリヤの後を追った。二人が渡り終わると、それまで分かれていたヨルダン川の水は元に戻り、二人が通った道は消え去ってヨルダン川は元の姿を取り戻した。５０人の預言者たちは、遠く去っていくエリヤとエリシャを見送った。もう、エリヤを再び見ることはあるまい。

　川を渡り終えると、エリヤはエリシャに言った。「私があなたの元から取り去られる前に、あなたのために何をしようか。何なりと願いなさい。」　すると、エリシャは言った。「あなたの霊の、２倍(*)を私に受け継がせてください。」

*　『聖書』（フェデリコ・バルバロ訳、講談社、１９８０年）p.554及びp.309、申命記第２１章第１７節によれば、長男は遺産相続に際して２倍の取り分を得たという。

　エリヤは言った。「あなたは難しい願いをする。私があなたのもとから取り去られるのをあなたが見れば、願いはかなえられる。もし見なければ、願いは叶えられない。」

　彼らが話しながら歩き続けていると、炎の馬に引かれた炎の戦車が現れ、彼らに向かってきた。とっさにエリシャがよけると、炎の馬と炎の戦車はエリヤとエリシャを隔てるように止まった。突然のことに動転したエリシャが見守る中、エリヤは炎の戦車に乗り込んだ。そして炎の馬は、エリヤを乗せた戦車を引いて天へと昇り始めた。

　そこでエリシャは我に返って叫んだ。「我が父よ、我が父よ。イスラエルの戦車よ、その騎兵よ。」　だが、戦車は止まることなく昇り続け、ついにエリヤは消えた。エリシャは自分の衣をつかんで二つに引き裂いた。エリシャが茫然としていると、何かが空から落ちてきた。　－　エリヤの着ていた外とうである。エリシャはそれを拾った。彼はそれを握りしめてしばらく地面にうずくまっていたが、やがて立ち上がり、ヨルダン川まで引き返した。岸辺に来ると、ヨルダン川は滔々とうとうと流れ続けている。どうやって帰ればいいのだろうか。エリシャは考えあぐねたが、結局、こちら側に渡るときに師がしたことと同じことをすることにした。彼は「エリヤの神、主はどこにおられますか。」と言うと、師エリヤの外とうで川の水を打った。すると、川の水は左右に分かれ、道ができあがった。エリシャが川を渡り終えると、川の水は元の姿を戻した。

　エリシャが戻ってくると、ヨルダン川の西側に留まっていたエリコの預言者の仲間たちは彼を見て、「エリヤの霊がエリシャの上にとどまっている。」と言い、彼を迎えてその前で地にひれ伏した。彼らはエリシャに言った。「ご覧ください。しもべたちのところに５０人の戦士がいます。彼らにあなたの主人を捜しに行かせてください。主の霊は彼を運び去り、どこかの谷に投げ落としたかもしれません。」　しかしエリシャは「行かせてはならない。」と答えた。エリヤは天に昇ったのだ。谷に落ちているはずなどない。

　だが、彼らはそれでもしつこく願い続けた。エリシャはついに根負けして「そこまで言うのなら、行かせなさい。」と言った。彼らは５０人の男を送り出して３日間、エリヤを探させたが、結局見つけることができずにエリコに帰ってきた。それを見たエリシャは言った。「だから言ったではないか、『行くな』と。」

（列王記下第２章第１節～第１８節より）

参考地図1-7-15：エリヤ、天に昇る

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