イスラムの歴史 (2010-12-20)

(2010-12-20)　ダビデとバト・シェバ　 part 4

（前回からの続き）

　この戦いを受けてヨアブは、これまでの戦いの報告書をしたためさせ、それをダビデに送ることとし、使者に言った。

　「戦いの一部始終を王に報告し終えたとき、もし王が怒って、『なぜそんなに町に接近して戦ったのか。城壁の上から射かけてくるとわかっていたはずだ。昔、エルバアルの子アビメレクを討ち取ったのは誰だったか。あの男がテベツで死んだのは、女が城壁の上から石臼を投げつけたからではないか。なぜそんなに城壁に接近したのだ』と言われたなら、『王のしもべ、ヘト人ウリヤも死にました』と言うがよい。」

　（アビメレクの故事については(2009- 4- 9)　アビメレク　part 10を参照）

　使者は出発し、エルサレムのダビデのもとに到着すると、ヨアブに命じられたとおりに報告した。

　「敵は我々よりも優勢で、野戦を挑んできました。我々が城門の入り口まで押し返すと、射手が城壁の上からしもべらに矢を射かけ、王の家臣からも死んだ者が出て、王のしもべ、ヘト人ウリヤも死にました。」

　使者の報告を聞いたダビデは使者に言った。

　「ヨアブにこう伝えよ。『そのことを悪かったとみなす必要はない。剣があれば誰かが餌食になる。奮戦して町を滅ぼせ。』　そう言って彼を励ませ。」

　使者は戦地ラバへ帰って行った。ダビデは、ウリヤの戦死を直接にウリヤの妻バト・シェバに知らせることは差し控えた。だが、戦地ラバとエルサレムの間に定期的な人の行き来があるので、やがてバト・シェバにも夫の戦死が伝えられた。夫と再会したときには全てを話すつもりでいたバト・シェバは、夫が帰らぬ人となったことを嘆き、喪に服した。

　喪が明けると、ダビデは人をやってバト・シェバを王宮に引き取り、妻とした。やがてバト・シェバは男の子を産んだ。だが、ダビデのこの行いは神の意に適わなかった。

　ダビデとしては一連の出来事をうまく隠したつもりだったかもしれない。だが、バト・シェバが王宮に入るのを見た者がいたり、ウリヤに持たせた書簡を書いた書記、読んだ書記など、要所要所で一連の出来事を知るものたちがいた。他人の口を手でふさぐこともできない。やがてこの話は、知る人ぞ知る秘密となってしまったのである。

（次回に続く）

参考地図1-6-19：ダビデとメフィボシェト～ダビデとバト・シェバ

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