イスラムの歴史 (2010-12-13)

(2010-12-13)　ダビデとバト・シェバ　 part 2

（前回からの続き）

　翌日、ダビデはウリヤが自分の家には帰らなかったことを知らされた。そんなことでは困るダビデは、自然を装って王宮の入り口に向かって歩き、ウリヤを見つけると話しかけた。

　「昨日はここに泊まったそうだな。せっかく遠征から帰ってきたのに、なぜ家に帰らないのか。」

　ウリヤはダビデに答えた。

　「神の箱も、イスラエルもユダも仮小屋に宿り、私の主人ヨアブも主君の家臣たちも野営していますのに、私だけが家に帰って飲み食いしたり、妻と床を共にしたりできるでしょうか。あなたは確かに生きておられます。私には、そのようなことはできません。」

　至極もっともな意見である。

　（弱ったな）

　表情に出すわけにはいかないものの、何とかしなければならないダビデは、次の手を考え、ウリヤに言った。

　「今日はここにとどまるがよい。明日、お前を送り出すことにしよう。」

　そうしてダビデはウリヤを招き、食事を共にしてウリヤに酒を飲ませ、酔わせた。だがどんなに酔っても、戦場から帰ってきたばかりのウリヤは酒に飲まれることはなかった　－　夕暮れになるとウリヤは退出し、しかし家には帰らず、昨夜と同じように主君の家臣たちと共に眠ったのである。酔わせればウリヤは家に帰ってバト・シェバと寝るだろうというダビデの目論見はあっけなく外れた。

　（いかん）

　頑として家には帰らないウリヤを前に、さすがにダビデは焦り始めた。明日にはウリヤを戦場に戻らせることにしている。さらなる隠蔽工作のためにそれを引き留めるのは、不自然だった。このままでは、ウリヤと寝ることもなくバト・シェバは子どもを産むことになってしまう。そうすれば当然、その父親は一体誰なのか、という話になる。ダビデが疑われるような形跡を残すわけにはいかなかった。

　追い詰められたダビデは、ついに一線を越える。翌朝、ダビデは前線の司令官ヨアブあてに、手紙を書いた。その手紙の内容は、次のようなものだった。「ウリヤを激しい戦いの最前線に配置し、彼を残して退却し、戦死させよ。」　しかもあろうことか、その手紙をウリヤ本人に持たせて、ウリヤを戦場に向けて送り出したのである。

（次回に続く）

参考地図1-6-19：ダビデとメフィボシェト～ダビデとバト・シェバ

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