イスラムの歴史 (2010-10-25)

(2010-10-25)　アブネル、暗殺される　part 2

（前回からの続き）

　ダビデはヨアブを呪って言った。「ネルの子アブネルの血について、私と私の王国は主に対して永遠に潔白だ。その血はヨアブの頭に、ヨアブの父の家全体にふりかかるように。ヨアブの家には漏出の者、重い皮膚病を病む者、糸紡ぎしかできない男、剣に倒れる者、パンに事欠く者が絶えることのないように。」

　ダビデはヨアブとヨアブの率いる兵士全員に向かって、「衣服を裂き、粗布をまとい、悼み悲しんでアブネルの前を進め。」と命じた。ヨアブ一行を先頭に、ダビデ王自身はアブネルのひつぎの後に従った。一同はアブネルをヘブロンに葬った。王はその墓に向かって声を上げて泣き、兵士も皆泣いた。

　王はアブネルを悼む歌を詠んだ。

「愚か者が死ぬように
　アブネルは死なねばならなかったのか。
　手を縛られたのでもなく
　足に枷かせをはめられたのでもないお前が
　不正を行う者の前に倒れるかのように
　倒れねばならなかったのか。」

　アブネルを悼んではいるものの、ヨアブを弾劾しているも同然の内容だった。ヨアブは石になったかのように黙って立っていた。兵たちは皆、アブネルを悼んでさらに泣いた。

　葬儀が済み、兵士は皆、まだ日のあるうちにダビデに食事を取らせようとやってきた。しかし、ダビデはきっぱりと誓って言った。

　「日の沈む前に、私がパンであれほかの何であれ、口にするようなことがあったら、神が幾重にも罰してくださるように。」

　兵士たちは皆これを知って、良いことと見なした。全ての兵士、そして全イスラエルはこの日、アブネルが殺されたのは王の意図によるものではなかったことを認めた。後に、王は信頼できる家臣に密かに言った。

　「今日、イスラエルの偉大な将軍が倒れたということをお前たちは悟らねばならない。私は油を注がれた王であるとはいえ、今は無力である。あの者ども、ツェルヤの息子たち（＝ヨアブやアビシャイのこと）は私の手に余る。悪を為す者には主ご自身がその悪に報いられるように。」

　今やヨアブたちもまた、ダビデの有力な将軍であった。これから外敵との戦いも控えている今、そうしてヨアブの復讐に一応の筋が通っているため、正面を切ってヨアブを断罪する状況ではなかった。

（サムエル記下第３章第２２節～第３９節より）