イスラムの歴史 (2010-7-29)

(2010-7-29)　サムエルの死

　その頃、預言者サムエルは、自分の死期が近いことを悟った。サムエルは床に横たえられた。噂を聞いた民が、心配そうに集まってきた。

　サムエルは民に言った。

　「私はあなたたちが求めるところに従い、あなたたちの上に王を立てた。今からは王が、あなたたちを率いて歩む。私は年老い、髪も白くなった。私は若い頃からあなたたちを率いて歩んできたが、今、主と、主が油を注がれた王の前で、私を訴えなさい。私が、誰かの牛を取り上げたことがあるか。誰かのロバを取り上げたことはあるか。誰かを抑えつけ、誰かを踏みにじったことはあるだろうか。誰かの手から賄賂を取って何かを見逃してやったことがあるだろうか。あるのならば、償おう。」

　これを聞いた民は言った。

　「あなたは我々を抑えつけたことも、踏みにじったこともありません。誰の手からも何一つ取り上げたこともありません。」

　サムエルは言った。

　「今日、あなたたちが私の手に何一つ訴えるべき事を見いださなかったことについては、主が証人であり、主が油を注がれた方が証人だ。」

　民は答えて言った。

　「確かに証人です。」

　サムエルは言った。

　「あなたたちが主を畏れ、主に仕え、御声に聞き従い、主のご命令に背かず、あなたたちも王も主に従うならそれでよい。しかし、もしも主の御声に聞き従わず、主のご命令に背くなら、主の御手はあなたたちの先祖に下ったように、あなたたちにも下る。」

　折しも、外は雷を伴った豪雨になっていた。人々は神とサムエルを非常に恐れて言った。

　「しもべたちのために、あなたの神、主に祈り、我々が死なないようにしてください。確かに私たちはあらゆる重い罪の上に、更に王を求めるという悪を加えました。」

　サムエルは答えて言った。

　「恐れるな。あなたたちはこのような悪を行ったが、今後はそれることなく主に付き従い、心を尽くして主に仕えなさい。むなしいものを慕ってそれて行ってはならない。それはむなしいのだから何の力もなく、救う力もない。主はその偉大な御名のゆえに、ご自分の民を決しておろそかにはなさらない。主はあなたたちをご自分の民と決めておられるからである。私もまた、あなたたちのために祈ることをやめ、主に対して罪を犯すようなことは決してしない。あなたたちに正しく善い道を教えよう。主を畏れ、心を尽くし、まことをもって主に仕えなさい。主がいかに偉大なことをあなたたちに示されたかを悟りなさい。もしもあなたたちが悪を重ねるなら、主はあなたたちも、あなたたちの王も滅ぼし去られるであろう。」

　これらのことを述べ終えると、やがてサムエルは没した。全イスラエルは集まってサムエルを悼み、ラマにある彼の家に葬った。

（サムエル記上第１２章、第２５章第１節より）

参考地図1-6-7：ダビデの逃走（再掲）

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