イスラムの歴史 (2009-8-20)

(2009-8-20)　ナオミとルツ　part 1

　士師が世を治めていた頃の話である。

　飢饉が国を襲ったので、ある男が妻と二人の息子を連れて、ユダのベツレヘムからモアブの野に移り住んだ。

　その男の名はエリメレクといった。妻の名はナオミ。エリメレクはユダのベツレヘムの出身で、エフラタ族の者であった。彼らはモアブの野に着き、そこに住んだ。

　ところが、やがて男は妻と二人の息子を残して死んでしまった。

　生活は決して楽でないものの、妻と二人の息子はそこで暮らし続け、やがて二人の息子はそれぞれモアブ人の妻をめとった。一人の妻は名をオルパ、もう一人の妻はルツといった。彼らはさらにそこで１０年ほど暮らしたが、ナオミの二人の息子も死んでしまった。ナオミは、夫と二人の息子に先立たれてしまったのである。

　ナオミは途方に暮れた。やがて故郷のユダの飢饉がやわらいだことを伝え聞いたナオミは、住み慣れたモアブを離れ、ユダの地に戻る決心を固めた。

　ユダに帰るナオミに、二人の嫁もついていった。

　二人がついてくるのを見ると、ナオミは言った。「自分の里に帰りなさい。あなたたちは死んだ息子にも私にも、よく尽くしてくれた。どうか主がそれに報い、あなたたちに慈しみを垂れてくださいますように。どうか主がそれぞれに新しい嫁ぎ先を与え、あなたたちが安らぎを得られますように。」

　ナオミが二人に別れの口づけをすると、二人は声を上げて泣いた。

（次回に続く）