イスラムの歴史 (2009-7-2)

(2009-7-2)　士師サムソン　part 13

（前回からの続き）

　時が流れた。

　やがてサムソンは、ソレクの谷にいるデリラという女を愛するようになった。連日、彼はデリラのところに入り浸っては夜な夜なデリラと愛を語らった。

　それを知るとペリシテ人の領主たちは、サムソンのいない時を見計らってデリラのところにやって来て言った。

　「サムソンをうまく言いくるめて、その怪力の秘密を探ってもらえないか。どうすれば彼を打ち負かし、縛り上げて苦しめることができるのか、探ってくれ。もし成功したら、我々は一人一人お前に銀１１００枚を与えよう。」

　領主一人がそれぞれ銀１１００枚をくれるというのである。とんでもない大金だった。デリラは金に目がくらみ、領主たちに協力することにした。

　その夜。デリラは寝床でサムソンに聞いた。

　「あなたの怪力がどこに秘められているのか、教えてください。いったいどうすれば、あなたを縛り上げて苦しめることができるのかしら。」

　サムソンは答えた。

　「乾いていない新しい弓弦７本で縛ればいい。そうすれば私は弱くなり、並の人間のようになってしまうのだ。」

　翌日、デリラはその情報をペリシテ人の領主たちに知らせた。領主たちは喜び、さっそく乾いていない新しい弓弦７本を届けた。かつ、兵士も同行させた。

　その夜。デリラは眠りについたサムソンを、その７本の弓弦で縛った。兵士たちも奥の部屋に伏せておいた。

　そうして彼女はサムソンを起こした。「サムソン、起きて！　ペリシテ人が来たわ！」

　サムソンは飛び起きると、自分を縛る弓弦を、まるで麻のひもが火にあぶられたときのようにあっさりと断ち切ってしまった。

（次回に続く）