イスラムの歴史 (2007-11-30)

(2007-11-30)　ヨセフ（再会編）　part 9

（前回からの続き）

　ベニヤミンの袋から銀の杯が出てくると、兄たちはうめいた。これは何かの間違いだ。兄たちが弁明を始めたが、執事は兵に命じてベニヤミンを捕らえた。そうして執事は言った。「先ほども言ったとおり、銀の杯を盗んだ者は奴隷となるが、他の者に罪はない。故郷に帰るのだ。」

　だが、そう言われて引き下がれる状況にはなかった。このままベニヤミンを捕らえられてカナンに帰ったところで、父ヤコブの悲嘆はどれほどのものか。一行は衣を引き裂いて悔やみ、ろばに荷を積んで、執事の一隊について行った。このままカナンに帰ることなんて、できはしない。

　兄弟たちがヨセフの屋敷にはいると、ヨセフは役所に出勤せずにそこにいた。兄弟たちはひれ伏した。ヨセフは言った。「お前たちのしたことは、一体何だ。私のような者は占いを当てることを知らないのか。」

　ユダが答えた。「なんと申し開きができましょう。この上は、私どもも奴隷になります。」　－　何としてもベニヤミンだけは取り返さねば。

　しかし、ヨセフは言った。「そんなことは考えてはいない。杯を見つけられた者だけが奴隷になればよい。お前たちは、安心して父親のもとへ帰るがよい。」

　ユダは、必死の思いで少し前に進み出て言った。「どうか怒らずに聞いてください。実は前回、あなた様が末の弟を連れてくるようにおっしゃられた際、私どもの父は、それだけはならぬ、と言いました。『お前たちも知っているように、私の妻は２人の息子を産んだ。一人は行方不明だ。きっと死んでしまったのだろう。お前たちはもう一人までも私から取り上げようとする。もしこの子に不幸があるならば、お前たちは白髪の父を苦しみのうちにあの世に送ることになる』と申しました。今もしこの子を連れて帰ることができないならば、父はきっと悲しみのうちに死んでしまうことでしょう。私はこの子を連れてくるにあたり、もしもこの子に何かあれば、生涯その罪を背負うと父に誓いました。どうか、私を奴隷にし、この子を帰らせてください。もう老いた父に、これ以上苦しみを背負わせることには耐えられません」

　通訳を間に立てていたものの、もちろんユダの話すことは直にヨセフに伝わっていた。父ヤコブ、母ラケルのことが思い出されて、ヨセフはとうとう耐えきれなくなってそばにいたエジプト人たちに叫んだ。「みんな、出て行け。いいから、すぐに！」　ヨセフの部下は驚きながらも部屋を退出した。それと同時にヨセフはとうとうこらえきれなくなって、泣き始めた。

　兄弟たちはあっけにとられた。

（次回に続く）

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