イスラムの歴史 (2007-9-26)

(2007-9-26)　ヤコブ　（帰郷編）　part 6

（前回からの続き）

　エサウが近づいてくる間、ヤコブは七度、地にひれ伏した。

　エサウは集団の群れから進み出て、走り寄ってヤコブを抱え、抱きしめて泣いた。

「ヤコブ。本当にヤコブなのか。よくぞ、生きていた」

　若かりしころから、もう長い年月が経っていた。時間が、恨みを洗い流していたのであろう。エサウも今や多くの妻と子どもを持ち、かつて弟に祝福を奪われたことなど、もう大したことではなくなっていた。

　我に返ったエサウが、周りを見回して言った。「この人々は、誰なのか。」

　ヤコブは答えた。「あなたのしもべである私に、神が恵んでくださった子どもたちです。」そう言って、ヤコブは妻や子どもたちを呼び寄せた。エサウの様子から、もう完全に安心できるとみてとってのことである。

　エサウとヤコブが雑談するうちに、やがて側女や妻とその子どもたちが次々と出てきて、エサウにひれ伏した。

　エサウはヤコブに尋ねた。「あの多くの家畜は、一体何のつもりか。」

　ヤコブは言った。「ご主人様の好意を得るためです。」

　エサウは言った。「何を水くさいことを。私も充分な家畜を持っている。あの家畜は、お前が自分で持っていなさい。」

　それでもヤコブが頑としてエサウに受け入れるように勧めたので、エサウも好意を受け入れることにした。

　そうしてエサウは、セイル地方に帰っていった。結果として見れば、ヤコブの心配は杞憂だったのである。ヤコブは一団を連れてもう少し先に進み、家畜のための小屋を建てた。そのため、その場所はスコト（小屋）と呼ばれるようになった。

（ヤコブ（帰郷編）は旧約聖書　創世記　第３２～３３章より作成）