イスラムの歴史 (2007-9-17)

(2007-9-17)　ヤコブ　（帰郷編）　part 2

（前回からの続き）

　ヤコブは、自分が送った使いが戻ってくるのを待った。そして、数週間が過ぎた。しもべたちは、ヤコブのもとに現れて言った。「エサウ様のところに行って参りました。ご主人の言葉を伝えると、エサウ様は大変お喜びの様子で、自らヤコブ様を迎えるため、４００人のお供を連れてこちらに向かうとのことでした。」

　その報告を聞いて、ヤコブは戦慄した。４００人！　弟を迎えるにしては、あまりにも人数が多くはないか？
「わかった。下がって、休むがよい。」　ヤコブはしもべを遠ざけると、思案に暮れた。

　数日、ヤコブはさらに同じ場所に留まり続けた。その間、悩み続けた。「兄、エサウ様は大変喜んだ様子で」というしもべの言葉を、どこまで信用してよいものか。本当かもしれない。偽りかもしれない。であるにしても、４００人の手勢は、常識を外れるぐらい多かった。仮にエサウがヤコブを滅ぼすために来るのだとしたら、そのような人数の集団に襲われたら、ひとたまりもない。会おうか。それとも逃げようか。

　悩み抜いたヤコブの最終的な決断を後押ししたのは、ハランを去るきっかけとなった神の言葉だった。自分の故郷に戻るように告げたのは、ほかならぬ神である以上、何かの思し召しがあってのことであろう。ヤコブはそれに賭けた。

　賭けつつも、ヤコブは用意を怠らなかった。自分の集団や家畜を、いくつかのグループに分けたのである。「これなら」とヤコブは言った。「万が一の事態になっても、誰かは生き延びられる。」

　そうしてヤコブは、神に祈った。「アブラハムの神、イサクの神よ。あなたは私に、ハランを去って故郷に戻るようにおっしゃいました。私は取るに足らない者です。しかし、かつてこのヨルダン川を杖一本で渡った私は、今ではこれだけの集団を持つまでに至りました。どうか、兄から私をお守りください。」

（次回に続く）

参考地図1-2-5：古代中近東

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