イスラムの歴史 (2007-7-20)

(2007-7-20)　ヤコブ　part 3

（前回からの続き）

　母リベカにつくってもらった料理を持って、ヤコブは父イサクのところに現れた。「父さん」ヤコブは呼びかけた。「私はここにいる。そこにいるのはエサウか？ヤコブか？」　イサクは年老い、視力をすでに失いかけていた。そのため、寝て過ごすことが多かった。

　ヤコブには一瞬、ためらいが生じたことであろう。母リベカの意を受けての行動とはいえ、父をだますことに逡巡しなかったといえば嘘になる。ヤコブは、意を決して言った。「エサウです。父さんの言われたとおりに、獲物をとってきました。起きて、どうぞ召し上がってください。」

　イサクはかすかな違和感を覚えた。「今日はまた、どうしてこんなに早く獲物を得ることができたのだ？」

　ヤコブは答えた。「神のご加護があったからでしょう。」

　イサクは言った。「近く寄れ。本当にエサウかどうか、確かめたい。」　ヤコブがイサクに近寄ると、イサクはヤコブの腕を触りながら、言った。「はて。声はヤコブのように思ったが、こうして触ってみると、エサウの腕のように毛深い。」（前回書いたように、ヤコブは母リベカの言葉に従い、毛皮を腕にまとっていた）。

　イサクは、念を押した。「お前は、本当にエサウなのだな？」

　ここまで来れば、もう今さら後には引けない。深く息を吸って、ヤコブは答えた。「もちろんです。」

　年老い、もうほとんど目が見えないイサクは言った。「それでは、食事をここに持ってきてくれ。食後に、お前に祝福を与えよう。」

　イサクはヤコブが運んできた料理を食べ、ワインを飲み、そうしてヤコブに祝福を与えた。

「どうか、神が
　天の露と地の産み出す豊かなもの
　穀物とぶどう酒をお前に与えてくださるように。
　多くの民がお前に仕え
　多くの国民がお前にひれ伏す。
　お前は兄弟たちの主人となり
　母の子らもお前にひれ伏す。
　お前を呪う者は呪われ
　お前を祝福する者は
　祝福されるように。」

（次回に続く）