ナボポラッサル後半生の年代記 (ABC4) (翻訳:2019-11-4) (注意事項)
概要 ナボポラッサルの後半生に関する年代記(ABC4)は、古代バビロニアの史料文書の1つである。この文書には、バビロニア王ナボポラッサルと彼の皇太子ネブカドネザルの戦争について記載されている。戦争は、バビロニア同様に、滅びゆくアッシリア帝国の一部を攻め落とすことを目指すライバル国に対して行われた。 解説 この年代記は、ナボポラッサルの前半生の年代記(ABC2)及びニネヴェ陥落の年代記(ABC3)に続く一連の文書の最後の部分である。この文書は識別番号BM22047(96-4-9, 152)の小さな粘土板に記されており、ABC2、6、9、15と同様に、新バビロニア帝国の行政文書の体裁で書かれている。粘土板の長さは45mm、幅54mm。文書の保存状態は良好で、欠損部分は極めて少ない。 年代記の学術的な分類に関するごく簡単な解説については、こちらを参照してほしい。このページにおける翻訳は、A・K・グレイソンの『アッシリアとバビロニアの年代記』("Assyrian and Babylonian Chronicles",
A.K.Grayson)(1975年)及びジェーン・ジャックス・グラスナーの『メソポタミアの年代記』(アトランタ、2004年)("Mesopotamian Chronicles",
Jean-Jacques Glassner)による。 本文 ( [ ] 内及び()内は補足、[……] は判読不能を示す。)
[1] The eighteenth year of Nabopolassar (608/607): In the month Ulûlu the king of Akkad mustered his army and [1行目] ナボポラッサルの治世第18年(紀元前608/607年)ウルルの月、アッカドの王は彼の軍を召集し、 [2] following the bank of the Tigris to the mountains of Bit-Hanunya [2行目] ティグリス川の岸に沿って、Bit-Hanunyaの山々を目指し [3] in the district of Urartu, he went up. He set fire to the cities and [3行目] ウラルトゥの地へと行軍した。彼は街々に火を放ち、 [4] plundered them extensively. In the month Tebêtu the king of Akkad went home. [4行目] 広範囲において略奪した。テベツの月、アッカドの王は帰還した。 [5行目] 治世第19年(紀元前607/606年) シマヌの月、アッカドの王は軍を召集し、 [6] Nebuchadnezzar, his eldest son, the crown prince, [6行目] 長兄にして皇太子のネブカドネザルも [7] mustered his army. They marched to the mountains of Za[...]. [7行目] 彼の軍を召集した。彼らは、ザ[……]の山々へ行軍した。 [8] The king of Akkad left the prince and his army there while he returned to Babylon in the month of Du'ûzu. [8行目] アッカドの王は皇太子とその軍を残してドゥーズの月にバビロンに戻った。 [9] After his departure, Nebuchadnezzar did battle at Biranati, situated in the mountains, [9行目] 王が出発した後、ネブカドネザルは山中のBiranatiで戦い、 [10] captured Biranati, set it on fire, and took many prisoners. [10行目] Biranatiを占領するとそこに火を放ち、大勢の捕虜を捕らえた。 [11] He conquered all of the mountains as far as the district of Urartu. [11行目] 彼はウラルトゥ地方の遠きに至るまで、全ての山々を征服した。 [12] In the month Ulûlu the prince returned to Babylon. In the month Tašrîtu the king of Akkad mustered his army and [12行目] ウルルの月、皇太子はバビロンに戻った。タスリトゥの月、アッカドの王は軍を召集し、 [13] marched to Kimuhu, which is on the bank of the Euphrates. [13行目] キムフ(Kimuhu)へと行軍した。そこは、ユーフラテス川の岸にあった。 [14] He crossed the river, did battle against the city, and in the month Kislîmu he captured the city. [14行目] 彼は川を渡り、街と戦い、キスリムの月にその街を占領した。 [15] He sacked it and stationed a garrison of his in it. In the month Šabatu he went home. [15行目] 彼はそこを略奪し、守備隊を置いた。サバトゥの月、彼は帰還した。 [16行目] 治世第20年(紀元前606/605年) エジプト軍がキムフ(Kimuhu)の砦に対して行軍してきた。 [17] which the king of Akkad had stationed inside. For four months, [17行目] そこの中には、アッカドの王が滞在していた。4か月の間、 [18] they laid siege to the city, captured it, and defeated the garrison of the king of Akkad. [18行目] 彼らは街を包囲するとそこを占領し、アッカド王の砦を打ち破った。 [19] In the month Tašrîtu, the king of Akkad mustered his army, marched along the bank of the Euphrates, and [19行目] タスリトゥの月、アッカドの王は軍を召集し、ユーフラテス川の岸に沿って行軍し、 [20] pitched camp in Quramatu, which is on the bank of the Euphrates. [20行目] ユーフラテス川沿いにあるクラマツ(Quramatu)で野営した。 [21] He had his army cross the Euphrates and they captured[22] Šunadiri, Elammu, [21行目] 王は、軍にユーフラテス川を渡らせると、以下の地を占領した:スナディリ(Šunadiri,)、エランム(Elammu)、 [22] and Dahammu, cities of Syria, [22行目] ダハンム(Dahammu)、そしてシリアの街々を。 [23] and plundered them. In the month Šabatu the king of Akkad went home. [23行目] そして、それらの街を略奪した。サバトゥの月、アッカドの王は帰国した。 [24] The army of Egypt, which was in Karchemiš, crossed the Euphrates and [24行目] カルケミシュにいたエジプト軍は、ユーフラテス川を渡り、 [25] against the army of Akkad, which was camped in Quramatu, [25行目] クラマツ(Quramatu)で野営していたアッカド軍に向かって [26] it marched. They pushed the army of Akkad back so that they withdrew. [26行目] 行軍した。エジプト軍はアッカド軍を打ち破り、 [27行目] 治世第21年(紀元前605/604年)、アッカドの王は首都にいた。その間、彼の長子ネブカドネザル、 [28] and crown prince, mustered the army of Akkad. [28行目] 皇太子はアッカドの軍を召集した。
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