イスラムの歴史 (2008-12-15)

(2008-12-15)　士師エフド　part 2

（前回からの続き）

　古代の、素朴な時代だったからこんなことができたのであろう。部屋に、王は一人だった。

　無心にエフドは王に近づいていった。「あなたへの、神のお告げを持ってきました。」

　そう言ってエフドは耳打ちをするそぶりを見せて王に近づくと、利き腕の左手で右腿に隠して帯びていた両刃の剣を引き抜き、一気に王の腹に突き刺した。

　同時にエフドは右手で王の口をふさいだ。剣は柄まで王の腹に突き刺さり、抜かずにおいたため、脂肪が刃を閉じ込めてしまった。

　王が息絶えると、エフドはその部屋の戸は閉じて錠を下ろし、窓からそっと出た。そうして何食わぬ顔でエフドは去った。

　エフドが去った後、王の従臣たちが来て、屋上にしつらえた部屋の戸に錠がかかっているのを見て、王は涼しいところで用を足しておられるのだと言い合った。待てるだけ待ったが、いつまでも戸が開かないので、ついに鍵を取って開けてみると、王は死んでいた。

　従臣たちが手間取っている間に、エフドはさっさと逃げ去っていた。そうして彼はセイラに逃れた（位置不詳）。セイラに到着すると、エフドは角笛を吹き鳴らした。イスラエルの人々は彼のもとに集まり、彼を先頭に山をくだった。

　エフドは言った。「私の後についてきなさい。主は敵モアブをあなたたちの手に渡してくださった。」

　彼らは武器を取り、そのままモアブに向かうヨルダン川の渡河地点を制圧した。

　こうしてモアブ人の退路を断った上で、イスラエルの人々は１万人のモアブ人を打ち殺した。

　モアブはこの日、イスラエルの手中におちて屈服し、以後、国は８０年にわたって平穏であった。やがてエフドは静かに没した。

（士師記第３章第１２～３０節より）