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(2007-8-29) ヤコブ （ハラン脱出編） part 1 さらに時が流れた。ヤコブはひたすら、ラバンのためにも働いた。もちろん、自分のところの家畜を増やすのも怠らなかった。 ところが。それを、ラバンの息子たち（＝ヤコブの義兄弟）がねたみ始めた。「ヤコブは、父上の家畜をかすめているんじゃないか。いくらなんでも、ヤコブの家畜が増えすぎだ」などと、ありもしないことを言い始めていることがヤコブの耳に入った。また、義父ラバンの態度が、確かに冷たく、猜疑心に満ちたものになってきていることをヤコブも感じ取った。もう、忍耐の限界に来ていた。
ある日のこと。野原で家畜の群れを世話していたヤコブは、人をやって二人の妻を呼び寄せた。普段、仕事の場所に妻を呼ぶことがないので不審に思いながら二人がヤコブのところに行くと、ヤコブは二人を座らせて、口を開いた。 「二人に相談したいことがある。私は長い間、あなたたちの父のために働いてきた。なのに、義父さんは私のことを疑いの目でみている」 二人は黙って聞いていた。父親の人となりも充分知っているし、普段のやりとりからヤコブの心中が穏やかでないことも充分に知っていた。 「昨夜、私は夢を見た。」ヤコブは話を続けた。「夢の中に神の使い（天使）が現れて、私に故郷に帰るように告げた。私は、ここを去って故郷カナンに帰ろうと思う。」 二人は、すぐには返事ができなかった。ハランからカナン地方まで、距離にして600〜700kmはある。日本で言えば東京〜広島くらい。現代の我々なら何とも思わないかもしれないが、ろくに交通手段もなかった古代のことである。しかも、３人とも、歳が歳だった。カナン地方へ移住すれば、もうハランに戻ってくる見込みはゼロに近い。 しかし、少し間をおいて二人は答えた。「あなたに嫁いだ以上、父親は他人同然。私たちは、あなたについて行きます。神が告げたとおりにしてください」 移住を決めた３人は、密かに準備を始めた。 （次回に続く） 参考地図1-2-3：古代中近東
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